Bateau-Lavoir

対談連載「バトー・ラヴォワール」

Vol.3 陵本望援さん〈前編〉

KATSUMATA JAPAN officeの勝又美孝が親交の深いゲストを招き、仕事のお話をうかがいながら人生について考える連載企画。第3回はMAISON MIHARA YASUHIROなどを擁するSOSUで長く営業や広報を務め、後年は社長としてもその手腕を発揮した陵本望援さん。オンラインセミナーやインテリアなど幅広く事業を展開する陵本さんの「修羅場しかなかった」過去から「道が開けた」現在の話には、生きるためのヒントがそこかしこに。

「セミナーにはゆりやんやMr.都市伝説の関暁夫にも 出てもらう。そういう企画を考えるのは大好き(笑)」

「セミナーにはゆりやんやMr.都市伝説の関暁夫にも出てもらう。そういう企画を考えるのは大好き(笑)」

メンズブランド女性プレス同士の珍しい出会い

勝又美孝(以下K こうやって改めるとちょっと照れくさいですね(笑)。今回は対談の連載になります。

陵本望援(以下O すごいラインナップだけど、私でいいのかなって。呼ぶ人を間違ってるんじゃないかと(笑)。

K 間違ってませんって(笑)。陵本さんに出ていただくのは最初から決まってましたから。

O それはありがとうございます(笑)。

K では、まず出会いの話から始めたいんですが。

O 確か外苑前のOFFICEで会ってんな。トランジットの中村(貞裕)くんがやっていたカフェというかバーというか。あそこで雑誌『Begin』の児島(幹規)さんのパーティがあって、そこにおったんよ。それが初めて。

K そうだっけ。ホント?

O ホント。児島さんが紹介してくれて「MIHARAの陵本です」「SOPH.の勝又」ですって挨拶して。

K それは私、忘れてた。

O 2425年前。メンズブランドのプレス同士ってあんまり仲良くならへんやん。滅多に会う機会もないし。でも、児島さんが絶対に気が合うからって。

K 児島さん、ちょっと懐かしい。最近は全然お会いしてないですね。

O そのあと一緒に飲みに行ったんよ。勝又さんと児島さんとうちのアシスタントだった加藤っていうのと4人で。

K 言われてみればそうかも。うろ覚だけど(笑)。私のいちばん古い記憶はSOPH.にいる人間の結婚式があり、お相手の方がMIHARAさんのSOSUで働いてて。

O それも私が間に入って紹介したんよね(笑)。そのSOPH.の人間とは昔からの知り合いで。フリーペーパーで私個人の特集を6ページくらいで企画してくれて(笑)。

K それって、まだ若い頃ですよね。

O 24歳とか。もうMIHARAのプレスをやってたけど、話がおもしろいからって私の特集(笑)。その彼がのちにSOPH.に入ったんだけど、彼氏と別れてフリーだったアシスタントを会わせたら、そこからお付き合いしてとんとん拍子で結婚して(笑)。児島さんのパーティのあとやね。

K そっか。

O もっとたどれば、SOPH.が最初のオフィスから引っ越したあと、そこに入ったのがSOSUだったってこともあった。大家さんがSOPH.のあとにSOSUってどっちも変わった名前やなって(笑)。

K いろいろと縁はある(笑)。

O それからはワインバーに飲みに行ったり、道でばったり会うようなことも多くて。

K しばらく会わないときもあるけど、たまに思い出したようにご飯行ったりはしてましたね。

O プレスの人でこんなに仲良いのは勝又さんくらい。

K そうですか。でも、会えばたわいもない話をして(笑)。

O ほぼほぼ人生に関する話じゃない(笑)?

K 陵本さんには常に何かマイブームがあって、いろいろなことを教えてくれる。いまはこういうものにハマってるよとか、こういうものを食べたほうがいいよとか。

O ふたりともお酒は強いよね、相当(笑)。勝又さんはソムリエの資格も持ってるし。

K 澤田石(和寛さん)とかとご飯を食べることもあったよね。

O そうや。映画『るろうに剣心』とかauCMの衣装とかやってるスタイリスト、衣装デザイナー。元北村道子さんのアシスタントで、身長190cm以上。

K いまも会ってます?

O 何か困ったときに連絡があるくらい(笑)。ほら私、修羅場はくぐってきてるから。いや、修羅場しかないか(笑)。

K とにかく陵本さんとはそんな関係。同じ業界、業種だからか話が合う。

セミナーで得たお金はすべてカフェの家賃に

O 私にとってはSOPH.を辞めたのが衝撃的やった。

K 辞める前くらいから陵本さんがお店でセミナーを始めていて、それに誘ってもらったりもして。

O セミナーはオフラインから始めて、いまはすべてオンラインに切り替えて。聴講生が5000人超えたよ。レギュラーメンバーは200人。

K すごい。この本(『令和言玉』)の砺波洋子先生のセミナーに参加させてもらって、20年以上働いてきた会社を辞めようか迷ってると相談したら、さらっと私のデータを見て「辞めていいわよ、大丈夫」って(笑)。それが辞めるきっかけになった。

O 政財界の大物も見ているような人。

K 背中を押されなきゃ決心できてなかったかもしれない。カフェはもう閉めたんですよね。

O そう。いまはオンラインセミナーが主軸になっていて、オーガニック化粧品の物販付きセミナーをやってECと連動したり。あともうひとつはモロッコのカーペットの輸入。日本ではいまコンランショップだけに限定して卸してるんだけど、それも本格的に動こうと思ってる。知り合いの俳優をモデルに撮影もして。

K カーペットの撮影に俳優さん?

O 声かけたらおもしろそうだから出るよって(笑)。それをホームページから見られるようにして、カーペットのストーリーなんかも紹介しながら販売していこうかと。そのカーペットとはモロッコを旅行しているときに出会ったのよ。

K 前に少し聞いたけど、ドラマティックな感じだったんですよね。

O そう。自分が乗っていたタクシーが子供を轢いてしまって。そのまま行こうとするから「ストーップ!」って止まらせたんだけど、下から出てきた子供を見たら足がなかったのよ。運転手は周りの人たちに引っ張り出され、私は取り残されてどうすることもできず、ホテルに電話しても誰も出ず、最後に行ったカーペット屋の名刺を持ってたので、そこに電話して指示を仰いだということがあって。

K すごい話。

O その数年後、お礼のためにモロッコへ行ったら、そのカーペット屋はモロッコでもいちばん大きなカーペット商がやっているということがわかって。ヒュー・ジャックマンが買い物に来たり、『VOGUE ITALIA』ともコラボするようなところだったの。前に行ったお店は小さいところだったんだけど、イヴ・サンローラン美術館の横にあるっていうサロンに行くとカーペットがあまりにもすばらしくて、「日本で売ってる?」「売ってない」「売っていい?」「いいよ」ってそれが始まり(笑)。

K 轢かれた子もどうにか無事だったんですよね。

O すぐホテルにも動いてもらい、手術と入院まで漕ぎつけて。そのあとお見舞いとしてプレステを持って行った。でも、血だらけの足と泣き声がトラウマになって、しばらくは日本でもタクシーに乗る気になれなかったね。

K 本当はもう少しくわしく聞きたいところですが、今日は時間の制限もありますので……(笑)。最近は事務所を構えたとInstagramで見ました。

O そうそう。Ones TVというのを立ち上げたので、そこをスタジオにしていろいろな番組を作っていこうと思っていて。

K オンラインセミナーとはまた別で?

O オンラインセミナーは有料で、インフルエンサーとか芸人とかに出てもらうけど、それとは違う別の動画コンテンツ。

K そうなんですね。

O オンラインセミナーはゆりやんレトリィバァとかMr.都市伝説の関 暁夫とかにも出てもらうよ。そういう企画を考えるのは大好きだから(笑)。

K もともとお知り合いなんですか。

O 全然。おもしろいと思ってたら、カフェでバイトしてくれてた子がつなげてくれて。

K またそんな出会いが(笑)。ゆりやんさんとイチローイングリッシュさんを組ませるのも陵本さんの企画?

O そう。ゆりやんの英語力がいまいちだったから海外でやるならブラッシュアップしたほうがいい、イチローと組ませたらどうだろうって。イチローもまったく面識ないからお客様相談センターから連絡して、ものすごい数のオファーがあるみたいだけど、なんか私のメールがおもしろそうで目に留まったって(笑)。普通にセミナーに出てほしいって書いただけなんだけど。いまやYouTubeのチャンネル登録者数は34万を超えて、日本一の英会話オンラインスクールもやってて、すごいのよ。

K イケメンだし(笑)。

O 歳なんて私の半分くらいなのにいきなり説教みたいなことをしてきたりするからね。「自分が豊かにならないと人にあげたらあかん」とか(笑)。

K 若くして悟ってる。

O 話が逸れたけど、Ones TVはもっと間口を広くして申し込みとかなくてもサイトで観られるようにって考えてる。

K 私もわりと思いきってこの会社を立ち上げたつもりだったけど、陵本さんはその何倍も先を行っているというか(笑)。

O カフェとかいろいろと大変やったから、とにかくやらなあかんかったんよ(笑)。アイデアを出してお金にしていかないと間に合わなかったし、必死。セミナーで得たお金はすべてカフェの家賃になったから(笑)。(後編に続く)

キャリアのスタートからSOSUでの奮闘、カフェでの苦悩を経て、道が開けた現在までを振り返りつつ、今後の野望についてもお話をうかがった後編は8月9日公開予定!

陵本望援(おかもとのえ) Maison MIHARA YASUHIROを手がけるSOSUを三原康裕とともに設立、広報や社長を歴任。退社後は自身の会社でカフェとレストランバーを経営したのち、現在はオンラインセミナーやインテリアをはじめとする複数の事業を展開している。

勝又美孝(かつまたみたか) 
1998
年、SOPH.の立ち上げメンバーとして広報に就任。スタイリストへのリースやメデイア対応、販促物制作を通してブランドイメージの確立に寄与した。2020年にマネージメントやPRを業務とするKATSUMATA JAPAN officeを設立。

Photography  KENTARO MATSUMOTO
Text  YUSUKE MATSUYAMA